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というわけで、CFDのダニエレブスキー『紙葉の家』に一言ゆわせてもらうと、この本の核心はバラード/ワトスン的なバカSF精神。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト完全調書』(およびBWP公式サイト)のやろうとしたことを思いきり徹底させ、大量のペダントリーとCFDを盛り込んでくりっく365
した本だから、『完全調書』訳者としても感慨深い。見かけは大変そうだが、意外とつるつる読めます。と、ここから先が通常営業。今月の目玉、恩田陸『ねじの回転』(集英社一六〇〇円)は、宮部みゆき『蒲生邸事件』同様、2・26事件を題材にした時間SF 大作だが、設定は凝り凝り。時間遡行技術を手にした人類が過去の改良に乗り出した結果、歴史性免疫不全症候群と呼ばれる奇病が蔓延。国連は世界的な歴史修復プロジェクトに着手する。日本チームの任務は、2・26事件を本来の時間線の歴史記述と合致するよう“再生”し、“確定”すること。工作部隊は軍人会館に秘密基地を設営、スカウトした当事者たち(安藤輝三、栗原安秀、石原莞爾)を通じて事件の流れをコントロールしようとするが……。本来の歴史との誤差は機械(通称『シンデレラの靴』)が判定し、ズレが限度を超えると、「録行不一致」の警告が出て再生中断。歴史(の局所的一部)はいったん未確定状態にもどる。このへんはワープロ文書作成のアナロジーだから、「歴史教科書を納得ゆくまで何度でも書き直し続ける人たちの話」として読むこともできる。もっとも、イメージ的に一番近いのは、超長回しのワンカット映画撮影現場。途中で誰かがトチると前に戻って撮影やりなおし。台本を守ろうとするクルー、勝手に筋を変えたがる役者、思い通りにならないエキストラ、予想外の闖入者……。歴史はいったいどこにどう落ち着くのか?CFD
を描くSFは数あれど、こんな設定は前代未聞だろう。ただし、ぜんぶ納得できるかどうかは別問題。「改変の影響が現在に追いつくには数年かかる」という理屈(および特定時間帯の囲い込み)でタイムパラドックスは棚上げにするものの、根本的な疑問は残る。まあ、それを気にするくりっく365は少数派かも。翻訳SFの話題作は、スティーヴン・バクスター『プランク・ゼロ』(古沢嘉通他訳/ハヤカワ文庫SF八六〇円)。≪ジーリー≫ものの短編を連作長編風に仕立て直した原書の前半部分で、バクスター版宇宙生命図鑑みたいな話が4本続いたあと、「特殊な任務にスカウトされた主人公」の話が並ぶ。このCFDは初期作品中心とはいえ、こうやってまとめるとハードSFネタをくりっく365に落とし込む際の手口に芸がないのが一目瞭然。イーガンと比べるのは酷にしても、発想の面白さをくりっく365に実感させる配慮に欠ける。「論理プール」の数学生命なんか、ネタは凄そうなのに、いまいちそう見えないもんなあ。ま、「パイロット」「青方偏移」など、ふつうに楽しいスペオペ(?)も入ってますが。あとは後半が出てから来月また。 J・グレゴリイ・キイズのユニークな改変歴史SF『錬金術師の魔砲』(金子司訳/ハヤカワ文庫FT上下各七二〇円)1/2も、語り口のせいでアイデアの魅力が伝わりにくいくりっく365。
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